スローモビリティによる街づくり

つくば市経済部産業振興課
大久保剛史さん


インタビュー・撮影・編集
磯村歩
2013.02.28

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本コーナーではモビリティや街づくりをテーマに、先駆的な取り組みをしている様々なトップランナーにお話しを伺っていきます。第一回目は、つくば市経済部産業振興課主査 大久保剛史氏。つくば市は平成23年3月25日付で内閣府に「つくばモビリティロボット実験特区」として認定され、特区エリアにおいて日本で初めて搭乗型モビリティロボット(※)の公道実験を進めています。注目すべきは、実験に留まらず実質的な地域活動に活用されているということ。そしてその運用において新たな社会的効用が生まれているということです。今回は、その経緯から、実際に運用してからの街の反応についてお伺しました。


(※)「自律移動技術、姿勢制御技術等のロボット技術を適用することにより、安全性、利便性、環境適合性等を高め、人間が生活する空間において人間との親和性を保ちつつ人間の移動手段として利用しうる用具」



—— 「つくばモビリティロボット実験特区」認定の背景からご紹介いただけますか?


もともとつくば市は研究学園都市として、様々な研究や支援を行ってきました。そしてその成果をより広く社会に還元していこうというのがそもそもの背景です。様々な研究領域の中で、モビリティロボットが今後の社会に大きく役立っていくのではと考えました。ただ、多くのモビリティロボットは現在の法律では公道を走れません。モビリティロボットがどのように社会に役に立つのか、実際の社会(公道など)に走らせながら有用性を図っていくことが必要だろうと考えました。そこで構造改革特区の仕組みを使って、ロボット特区認定に向けて活動をはじめました。個人的には、立ち乗りのモビリティロボット「セグウェイ」を販売するセグウェイジャパンの秋元さん(同社取締役・マーケティング部 部長)にお話しを伺ううちに、“これは面白そうだ“と感じたのも大きいですね。そして実際に乗ってみて”ワクワク“したことも。



—— 日本初の取り組みということで、多くのご苦労があったのでは?


モビリティロボットを公道で走らせるためには「道路交通法」「道路運送車両法」の2つの法律を検討しなければなりません。よって警察庁、国土交通省など複数の官庁にまたがって調整を進める必要があります。それに加えて、所轄の警察など地域での様々な団体や機関との調整もあり、多くの時間を費やしました。“モビリティロボット”、“パーソナルモビリティ”という言葉自体も、まだ知られていませんでしたので、そこから丁寧に説明していきました。平成21年11月にプロジェクトをスタートさせ、それから凡そ1年半後の平成23年6月に内閣府の特区認証を受けることが出来ました。

現在、産業技術総合研究所の「マイクロモビリティ/車いす型ロボット」、日立製作所の「日立搭乗型移動支援ロボット」などを公道で実験し、基盤技術の構築や安全性の検証を進めています。そして、立ち乗り型モビリティロボット「セグウェイ」は観光活性化ツールとしてシティツアーや、そして地域の防犯パトロールで運用しています。



—— 認定後、実際に公道を走らせた後の地域の反応は?


様々な社会的効用が生まれました。セグウェイに乗車しての防犯パトロールでは、周りの目の温かさや優しさを感じます。最初は“危ないのでは”という意見もあったのですが、実際に運用してみると「すごいですね」「かっこいいですね」「さすがつくばですね」ととても好意的。声がけや挨拶などのコミュニケーションも生まれ、人とのやわらかなつながりを生みだしています。私たちは“モビリティ”ロボットといっていますが、ひょっとしたら“コミュニケーション”ロボットとも言えるのではないかと思っています。またセグウェイに乗っている防犯パトロールスタッフも「気分がイイ」と仕事に対するモチベーションが上がっているようです。

セグウェイを使った観光ツアーで街中を巡っていると、スマートフォンなどで撮影されるなど、周囲からとても興味をもたれます。立ち乗りで視線が高くなるので、周りから目立つというのもあるかもしれませんね。乗っている人は、ディズニーランドのパレードの主役になったような気分になるそうですよ。





また、周りに対して優しい気持ちになれるともいいます。例えば自転車でお知り合いに挨拶しようとすると、一度止まって、それから漕ぎだすという少々面倒な動作が必要ですよね。セグウェイであれば、減速やスピードをあげるといった行為を意識せずに操作(体重移動による直感的な速度調整)出来るので、自然に周囲に意識がむくのではないかと思っています。また動きもスムーズですから、滑らかに街の風景が切り変わり、街が映画のワンシーンになったかのように感じる方もいます。

このように周囲のいろんなものがみえて、今まで気づかなかったことに気づくことができる。そこに住んでいる人であっても、街の新しい気づきを得られる。そういった意味で、モビリティロボットには、人と人をつなぐ、さらには人と街をつなぐ効果があると思っています。

私たちは、ゆっくり滑らかに移動することで、新しい価値を生み出すモビリティのことを「スローモビリティ」と呼んでいますが、セグウェイはその代表格かもしれません。そして、その直感的な操舵は、“モビリティに乗っている”というより、“モビリティと一体化”しているような感覚。セグウェイは、装着型ロボットのようなものかもしれません。そういったことから「ロボットモビリティ」とも呼んでいます。

やはりモビリティは、ワクワクして楽しいものでないと。人は単に移動したいから移動するのではなく、楽しいから移動するんだと思うんです。そうでないと普及しないでしょう。





—— 今後の展開を教えてください。


今は安全性の観点から実験出来るエリアを限定していますが、これを少しづつ拡げていきたいですね。まずは、幅員3m未満の歩道での実験、また保安要員の緩和を進めていきたいと思っています。

また街づくりという観点でいうと、広く一般の市民の方が日常生活で活用できるシーンを増やしていきたいですね。自転車のシェアリングのように、ロボットモビリティのシェアリングがあってもいいかもしれません。どこかの駅を拠点に、半径数キロの中で幾つか拠点があって、自由に活用出来るようにできればいいですね。

また街の機能としての防犯パトロールなども拡げていきたいですね。更にはゴミ拾い、チラシ配りなど、地域の活動に使うことを拡げていってもいいかもしれません。2012年10月頃、ショッピングセンター側からの希望があって、ウィンドウショッピングを兼ねたセグウェイツアーを行いました。乗っている人も楽しく、施設側も話題づくりが出来てとても満足していらっしゃいました。こういう活動を通じて、どんどん地域に笑顔を生み出していきたいですね。


—— 本日はお忙しいところありがとうございました。

 


プロフィール

 

大久保 剛史
つくば市経済部産業振興課主査

1978年10月生。つくば市役所において「ロボットの街つくばプロジェクト」を立ち上げ、ロボットによるまちづくりやロボット産業の振興に携わる。

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